石倉 ヒロユキ (著), 真木 文絵 (著)
新潮OH!文庫
園芸家は未来に対して生きている
by カレル・チャペック
園芸好き夫婦(書いているのは基本的にだんな)による文庫書き下ろし。さしたる目的もなく盛り上がりもなく28章、時間を行ったり来たりしながらガーデンライフをつづる。たんたんとしテイながら品位を失わない文章(たぶん素質だろう)が、サブカル系の個性重視本に疲れた脳みそにはたいへんありがたい。
ガーデニングの本場イギリスでの生活や害虫との攻防、庭で繰り返される失敗の数々。この本の魅力はなんといっても、とくに裕福でもなくかといって貧しくもない適度に自己充足した生活をリアルに実感させてくれるところにあるだろう。過剰な諦めや悲壮感溢れるギリギリの日々みたいなのに取り囲まれているようないま、ひとんちの庭をのぞいて参考にしたり、種を植えて次の年に思いをはせるような生活がじつに新鮮だ。だんなの描くうまい具合に力の抜けたイラストも良い。載っている花の名前をググってイメージ検索するのも楽しいおまけです。