新倉俊一 2003.5
高校までの教育で西脇順三郎の名前を聞いたことがない。大学でもききゃしなかった。まあ図書館にあったから良かったけど。そうした場合、スルーしてきたものたちに大人になってから出会うことはあるのだろうか。これはみすず書房の「大人の本棚」というシリーズの一冊。
出版で「大人」というとそれこそ「成人男子」と同じ扱いの中で、みすずならばこういうシリーズを作ることができるといういい例だと思う。ほかにもアランの『芸術について』やチェホフの『短編と手紙』、吉田健一の『友と書物と』なんかが並んでいる。私の知ってるところだとであって、いろいろある。
ここに描き出されたエズラ・パウンドと西脇順三郎に関する著述が専門学問的にどれほどのものか私には正しく評価できない。だけれども、楽しむ読ませていただいた。楽しい読書。大人の本棚というのは、まさにそれを与えれてくれるべきだろう。子どもは苦心惨憺してクムツカシイのを読むんです。
個人的には日本浪漫派、萩原朔太郎、との比較が興味深い。飯島耕一氏がすでに指摘しているらしいけれども、もう少し西脇の「帰るべき場所」をつっこんで書いてくれると良かった。では
『評伝 西脇順三郎』には書いてあるのかな、と大人の楽しみはつづいていくのである。みなさんは最近どんなのを読んでますか。