八階は
天国と地上の間にある、
といわけじゃないけれど
空が大きく見えるということが
デパートの中の人達を少し自由にする。
「ああ、ここですか。何回か来たことがあるじゃない」
「そうよねぇ」はじめに二人の老婦人。
「ああ、あの娘ったら」そういえば・・、視点の端にもう一人の御婦人。
三人のうち真ん中の背丈の人が、一番低い方の手を引く。
一番背の高い人が
「レストランは十一階からね」
どうやら背の順で次女、長女、三女。
「あなたは一番やんちゃだったのにねえ」長女はこれまでのこと。
「仕方ないじゃない、もう」次女はいまのこと。
そして末の娘はといえば、ただ優しく笑うばかりで何も考えない。
アルツハイマーという病は多くの事を忘れさせてしまうという。
デパートでは誰もがお客様、
それが店員を日常から離しいつも以上に優しくさせてくれる。
お客様もそう。
優しい気持ちからはじまるいくつもの出会いがある所。
いろんな人の
いろんな優しさが
見えて
くる
・・。
【終わり】