フロアマネージャーのY氏は切れ者として評判の人で担当の階を二つももっている。しかも六階と九階。もちろん個人的にそれぞれの時間配分をさせて貰ってはいるが仕事中の往復量と移動時間は他の比ではない。こんな生活がこの夏から。いつまで続くのか、いつまで続けるのか。判断と決断が他人のものであり自分のものでもある立場。Y氏の中で他人共がグラデーションを描きながら順位を付けられ整理されていく。そんな中、週に一度Y氏は三番地階段の途中、九階と八階の間で立ち止まり自分の思考ってものそれ自体を考える。時間は決めない。仕事こそが時間の具体物であるから。場所だけはここ。いま、その目の前に、メラメラと、広大な窓のフレームに燃える朱色の夕日がある。「池袋の街はこの夕日に焼かれてしまうなんて事はないのだろうか?」と一人ごちても「ないな」と瞬時に応える自分がいる。驚かない。それだけのものをY氏は池袋の街と育ててきたのである。