モモコ
誰も泣くとは思っていなかった。そうなんだ。ここは池袋、なんでもありの街である。だから原因もあるがだからってこんな結果ってあるもんか。泣くなんてよっぽどのことである。確かに彼女には約二〇億分の一の確率で涙が流れるかもという回路が搭載されてはいる。だがなにも、と同じフロアで働く同僚は皆思った。今まで一ヶ月と少しこんなことは一度もなかったのに。二〇〇一年一月一日、二一世紀を迎えるにあたり百貨店と某企業が共同開発したデパートサイボーグな女「モモコ」。どいつだ、何をしやがったんだ!右往左往するフロアマネージャー、アレには凄くお金がかかってるんだぞ!息巻く開発部、どうやって直すのさ!?取説と首っ引きの管理部。ホントはね、単なる故障だったのよ、首の後ろのゴミがね。
だけれどこの、サイバーパンクな軽さと速さでフロアを駆け抜けた一粒の涙に纏わるちょっとした騒動にモモコはニンゲンってのを少しだけ知ったような気がする。2001.2.10