イアニス・クセナキスは優れた二〇世紀現代を代表する作曲家だった。運命という偶然を必然性としてとらえドラマチックに生きようとする現代人にこそ相応しい音楽をいくつも残した。時間は流れることをやめずその偉人をも鬼籍に招じ入れた。クセナキスがこの現代の世界に残したのはけして作品だけではなく、彼が普遍化したその理論も然りである。普遍とは万人の理解を目指すこと。彼の作曲理論は数多の自然現象を五線譜に移し替えることを万人に可能なものにした。いまクセナキス自身の闘いの経験と記憶から解き放たれ、理論だけが世界に投げ出されている。ここ人々が持ち寄る偶然の出会うデパートという場所でクセナキスの理論を実践してみるのも良いだろう。方法.対象のお客様を任意に選びその残していく足跡を一定の座標軸の中に書きとめること。そしておのれの美意識に従いそれを音響化すること。 創造への信念を故人の残したものから学びつつ、冥福を祈る。