舞台とそれを作り上げる人。上に立って芸を見せる人とそれを拍手喝采楽しむ人。そんな人と人の関係が世界ってものを健全に回していくために必要だとすると、デパートでは後者二つがお客様で、前者が店員達ということになる。それぞれに朝があり、やっぱり冬ともなるとどちらも大変である。誰にとっても毎日毎日訪れる晴れの舞台ってのは結局のところ何気なく繰り返されるただの日常で、明るく晴れた朝も、どんより澱んだ曇りの日も白色蛍光灯が照らし出す舞台裏にはアンニュイという気分がつきものである。眠気をロッカーに押し込め、制服を着たら休憩室へ行って足を組みつつマルボロメンソールのフタを開け、向かい合った同僚と昨日のことを話そう。楽しかないよ、ただこうしてやり過ごすのよ。眉間の皺は笑顔のための筋力トレーニング。明日の休みのことは明後日話すわ、私が主役の一日のことをね。そうして朝のアンニュイは開演前のスモークに巻かれていく。