「なんかロマンチックな気分になっちゃった。」先ほどエスカレータで上がってこられたご夫婦。買い物はもう終わり、あとは食事でもして、と思ったら「あれ積もっているじゃない」の一言から、もう一〇分ほど経った。いろいろあったんでしょうね、もしかしたら雪国生まれ?出会いの場所?どちらにしてもいま見る雪はどうですか。二人で手をつないで屋外へ。寒いことは承知の上です。もう何にもいえません。どんなこと話しているのかな、よろしければお二人が停めた時間をちょっとお借りして、想像することをお許し頂けませんか。黙して語らぬ優しそうなおとうさん。まだまだ色々なことが待ってますよね、きっと今まであったより多くのこと。体力は充分ありそう、大丈夫ですよね。おかあさん、かつての文学少女はどんな風に眺めていますか、この景色。雪が奏でる長い休符の中、次の楽章までの間あと少し黙っていましょうか。