一月六日
山に登ったら降りねばならぬように物事には着実な始めと終わりの手続きが必要だ。元旦の朝いま池袋の街は眠りの中、住人は皆アルコールの混じった頭でそれぞれの夢をみている。日常はそれぞれの朝が順に始まり夢の時間は次々に変換終了。だが今日だけは別、東京芸術劇場脇の巨大な四車線はビルの鋭角に切りきざまれた光線に彩られながらどこを走っても良いよと言っているかのように自由に広い。昨日と今日、今日と明日の区切りはどこにあるのだろう。ひょっとしたら皆その線引きは自分の手で行わなくて良いのかも。夜はそのための淡い、所々極彩色の混沌とした道行きの夢の時間・・。ほんの少し前までは賑やかな西口公園も「謹賀新年」の四文字に封印された巨大な空虚。ちょっとだけ間延びした早朝に、人々が放棄した秩序をたった二人で保持しようという努力はきっと辛いから皆が帰ってしまった後の街を愛と妄想と笑いを燃料に疾走し紛らわせながら駆け抜けよう。