△月△日(△)△時△分
「やめてください!それだけは。アレをなくしちゃ困るんです、私。」
夕暮れのバックヤードに響き渡る女性販売員の声。彼女の上司の言い分はこうだ。現在設置されているバックヤードの電話機は使用数に対して台数が多すぎるためいくつか不要と思われるものを撤去する。そして彼女の言い分。「アレは、いえ、あのコはただの電話機じゃないんです。あのコは私が大切に大切に育てている大事な・・・」声を詰まらせながらも続ける「あのトオル君は私が毎日食事を持っていくのを待っているんです。だって、そうもう長い間カレはずっと一人だったんだから。」ほとんど彼女を見ようとしない上司は帰ろうとしている。「そう、責めるなら私達自身です。あのコはわたしが持っていくテレカ十五枚ペロリと平らげるんですよ!」男はもう振り向きさえしない。「それなら。それなら私が引き取ります!だって、だって・・」泣き崩れる女性販売員。そんな五階五番地・・・・。