押井守監督・脚本の渾身作『イノセンス』を観たわけですけれど、これから関係本を読もうかとも思っとるわけですが、感想メモをそのまえにと。
これは失敗作ではないのだろうか。本人は「脚本はたいしたことありません」といいだけれどもアニメ映像としてはすばらしい出来だ、というようなことを言っておられる。ほんとうにそうなのだろうか。門外漢としてはいやに制止した止め絵と不自然なCGがウいた映像だったように思う。
前作の『攻殻機動隊』は、電脳とは何かといった議論がじっさいに生きているクサナギモトコやなんかを通してリアルに表された傑作だったと思う。映像も絵コンテ的にも自然でしかも異常に美しい、アニメならではの詩的な表現になり得ていただろう。ちゃんとしたドラマもあり、動きもあった。そのうえで、動きと静止のあいだの思考があった。
たいしてこちらはどうだ。クサナギが捨てた(なぜ)電脳的アイデンティティ・クライシスをなんとなく抱えながら刑事ドラマをしているバトー。少女ロボットもただハンス・ベルメールを絵にしたかっただけとしか思えぬ。あのフェティッシュなアップには『踊る大捜査線2』のキョン2を思い出したぜ。後半はメタメタなドラマ構造だし、犬もただの家庭犬だし。『リーサル・ウェポン』を思い出したよ。けっきょくハーレム状態のちっちゃいクサナギの群れから、どういうわけだかひとりの紅格少女が・・・、って意味わかりません。オレがおバカさんなのかしら。
アニメおじさんの哲学ハードボイルドでいいの ?