「定常状態ーを越える」べく 「○」と何人かが音楽全般ほかよろず語り下ろし中!! / 「すべての表現するココロに捧ぐ」べくお送りしています つねに更新中!maru1978eonta@gmail.com!
by maru-eo 生きてく日々のメモ
文脈を参照して内容を割り引くことを「批判」と言います。
批判というと日本では攻撃と勘違いされがちですが、違います。 批判とは、隠されていた前提を明るみに出し、前提を取り替えると成り立たなくなることを証明して見せる営みのことを言うのです。 ●○●○●○●○●○● 宮台真司 07年12月22日 カテゴリ
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僕は基本的に幸福な音楽を好きではない。自分があまり幸せではないからかもしれないし、音楽というのはそれだけで幸せなものだから、ことさらに幸福なんて感情を音にしてくれるな、ということなのかもしれない。 しかし、世の中にはあるもので。ここにあげるホロヴィッツの『ザ・ラスト・レコーディング』は、どういうわけか僕を幸福な気分にしてくれる一枚なのだ。その幸福は、たとえば、子どもの頃に、家のなかで家族がみなそれぞれに違うことをしながら、母親の作る晩飯を待っているような感じだ。季節は冬で。不思議なことにじっさいのその情景を思い浮かべると、そうそう幸せとは思っていなかったように思うし、いまもそうは感じられはしない気がするのだが。 僕はクラシック音楽、西洋伝統音楽、をよく知らない。いま現在のクラシックがもつ旧態依然なものを否定するために現代音楽やポピュラー音楽を聴いているといっても良いくらいである。そしてそのことはいまや僕のなかで大切な一部にさえなってしまっている。なくてはつらいものになっている。ポピュラー音楽はクラシックを越えて、クラシックたり得るか、うんぬんかんぬん。 それとこれとはまったく別のものだよ。ホロヴィッツのピアノはそういっているように聞こえる。世の中には、きみ以外にはきみと違う無限の人々しかいはしない。音楽を聴くということはあるいは音楽が鳴っているということは、それ自体がきみをとりかこむ世界を聴くということだ。そこでどんなにきみが自分はこれが好きだ、これは嫌いだといったところで、それはあたりまえのことだ。きみと違う人がいるから音楽は鳴るのだ、とさえいえるくらいだろう? 僕にはホロヴィッツがどういう人かくわしくは知らないし、彼のピアノがうまいのかどうかわからない。ただ、いい音楽だなあ、と思いながら聴きつづける。そのとき、聴きながら答えが出ないことを良しとできる音楽が鳴っていることを確認する。それを自分とは違うとても多くの人々が共有していると知ることは思えることは、それもまたなんと幸せなことだろうか。それはクラシック音楽やロマン派音楽がいいということではなく。たとえばホロヴィッツという人が鳴らした音の連なりであり、愛した音楽を。 まあ、なにはともあれ、今日も音楽が鳴っている。色々なところで色々な音楽が鳴っている。それを聴く人がいる。音楽は終わらない、音楽を聴くことも。自分でない誰かがいて、自分がいるかぎりは。世界がありつづけるかぎり、音楽は響くことをやめない。ウラディミール・ホロヴィッツが人生の最後に自分の家で録音したその音を僕が聴く。何度でも最初から繰り返す。そのたびに音楽を聴く幸せを僕は感じることができる。 言葉が、ちょっと多すぎるなあと思ったときやいい音楽が聴きたいなあと思ったときに、何度も聴いてしまう。この一枚は僕にとってそういう作品なのであります。
by maru-eo
| 2004-10-01 02:17
| クラシカルM
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