「定常状態ーを越える」べく 「○」と何人かが音楽全般ほかよろず語り下ろし中!! / 「すべての表現するココロに捧ぐ」べくお送りしています つねに更新中!maru1978eonta@gmail.com!
by maru-eo 生きてく日々のメモ
文脈を参照して内容を割り引くことを「批判」と言います。
批判というと日本では攻撃と勘違いされがちですが、違います。 批判とは、隠されていた前提を明るみに出し、前提を取り替えると成り立たなくなることを証明して見せる営みのことを言うのです。 ●○●○●○●○●○● 宮台真司 07年12月22日 カテゴリ
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椎名林檎はJポップのミュージシャンと言うよりは、より音楽家というべきフレキシブルな才能あるヒトだ。音楽的に健全な野心をもっている、というべきかもしれない。 Jポップが同世代には強烈なフォロワーを生みだすのに対して、年長の世代にいまいち受けが良くない(というか、ほぼ無反応なヒトもいるだろう)のは、彼や彼女らが音楽的に著しく魅力がないからだろう。宇多田ヒカルだって、ポップスとしてはおおむね面白みに欠ける地味なものだし、それ以外もヒップホップ的なヒトやフォーク的なヒト、レゲエみたいなのもいるが、どれもたいして面白くない。これはオレ個人としてはプロデューサーに大きな原因があると思っている。それと、本人たちが音楽に対してあまりに無関心であり、勉強不足だし、向上心がない。音楽的に興味深いことを生みだし続けようと努力しているのはJポップでは安室奈美恵くらいだろうか? さて、そうした中で椎名林檎はソロ作の最後でかなり面白い境地に達した。その後「東京事変」というバンドを組んだ。第一作目の「教育」は「バンドって楽しくていいもんですねえ」的なニオイが濃厚だった。 してみるに、この東京事変の第2作目は、バンドアンサンブルが「教育」の数倍向上している。 なかなか衝動的でよろしい活動をしているジャズ・セッション・バンドのソイル・パンプ・セッションのタブゾンビ氏がトランペットでM3、M9に参加。とくにいま風のバンドサウンドでありながらイナタイホンキートンクなカクテルジャズになっているM9はよろしい客演振りだ。 亀田氏の曲が2つ入っているというのは椎名林檎だけでは幅が出ないからだろうか。いや、たぶん自然にバンド・メンバーとしての貢献なんだろうが。 当然、歌詞は椎名林檎が描いているのだが、その基調は「スーパースター」(M4)の「明日はあなたを燃やす炎に向き合うこころが欲しいよ もしも逢えたときは誇れるように テレビのなかのあなた 私のスーパースター」に観ることが出来るだろう。一言で、子育てしている女性の満たされぬ思い、と言ってしまえるように思う。うーむ、まあわかりやすいくらいに、椎名林檎であっても、フツーの主婦のごとく妄想を発動し、現実に色を付けるのだなあ。 彼女は同世代の、同時期にデビューした人たちよりも少し早く、もう若くない、と感じている。彼女のこれまでの歌詞の世界は自分の部屋に閉じこもるヒキコモリ的な部分と、そこで育てた自我や自意識を街中(新宿・九十九里・丸の内・山の手・品川埠頭)に持ち込むことによって生まれるダイナミズムにあった。その相田には福岡・博多・天神から出てくるという現実が裏書きしていただろう。 彼女はもう、大好きな人々とバンドに囲まれフツーの音楽家になった。結婚と離婚を経て、息子がおり、したいことは「再婚」だとも言う。もうフツーのいい年の女になった。 そうした彼女の思いはほどほどに長尺のラスト曲「手紙」に込められているだろう。 これはつい一昨日、宇多田ヒカルがした決断と同じものがベースにある曲だと思われる。 まるで21世紀の「卒業写真」みたいな、興味深いものだ。たぶん、Jポップ世代の女子はみなどこかでかつて荒井由実が作り出した、たった一人だけで十分に完成された世界、を如何に超えていくか、をテーマにしなくてはならないだろうという気がしているが、いまのJポップ世代の女子は、同世代の男から見ると、もっとタフに映る。 彼女らは自分の現実を音楽と同等に起き、現実でうまく答えが出せなくとも、それを見事に作品に落とし込む。 良質なJポップの表現においてはすべては、それぞれの現実世界と拮抗している。卓抜なる彼(男ではなかなかいないのが困りものだけれど)や彼女たちは、つねに現実と対峙しながら、問いを続け、なかには答えさえも出してしまう人がいる。 「人生は捨てたもんじゃない」と作品に残して、歌った・いまもこれからも歌う、のはついこのあいだの宇多田ヒカルだ。オレは、そういう表現を聴くに付け、まさにその通りと意を強くする。 椎名林檎はいまま新しい表現を開始している。彼女はそろそろ自分の言葉や世界ではなくて、彼女なりの音楽表現の世界を見始めている。それは彼女のような勉強熱心で向上心が旺盛なヒトだからこそ、できることだ。世界は広くて、音楽はずいぶんと豊かだ。椎名林檎は根っこをJポップに置きつつ、もう十分に超えている。こういうヒトは音楽家と言うべきだ。もっと広い世界を目指すのだ。 「未来は不知顔(しらんかお)さ、自分で創っていく。」 多分あなたはそう云うと判っているのに ほんのちょっとだけざわめいた朝に声を失くすの 私はあなたの強く光る眼(まなこ)思い出すけれど もしも逢えたとして喜べないよ か弱い今日の私では これでは未だ厭だ 「答えは無限大さ、自分で造っていく。」 枯れ行く葉が相変わらず地面を護っている そんな大地蹴って歩いては声を探すの 私はあなたの孤独に立つ意思を思い出す度に 泪を堪えて震えているよ 拙い今日の私でも 「スーパースター」 ここで「あなた」は目の前にいた誰かであり、テレビの中の誰かであり、明日の私である。「あなた」を複数化してしかkりと作品のうまみに変えている椎名林檎は歌詞の面でもJポップを超えた。特定の誰かではない「あなた」を措定することで、私・自分を強くすることができる。自分を変えていくことを畏れない。ようするに「大人」になったワケだ。 あとは、もう、しっかりと音楽の世界をずんずん広げていってください。そして言葉がなくともより多くの人に伝わる音楽表現をものにしてください。 1. 秘密(編:伊澤一葉) 2. 喧嘩上等 3. 化粧直し 4. スーパースター(曲:亀田誠治) 5. 修羅場 adult ver. 6. 雪国 7. 歌舞伎 8. ブラックアウト 9. 黄昏泣き 10. 透明人間(曲:亀田誠治) 11. 手紙(詞・編:椎名林檎、曲:伊澤一葉) 注記以外は詞・曲;椎名林檎
by maru-eo
| 2007-03-04 14:36
| シイナリンゴ周辺
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